産業用機械、工作機械などの大手の「豊和工業」の株価が2025年8月25日(月)に高騰しました。
同社は小火器(小銃や迫撃砲など)なども生産しており、防衛銘柄の一角でもあり、過去にも何度か高騰しています。
私は10年以上この会社の株主であり株価の動きを追ってきた経験があるため、少し記事を書いてみることにしました。
今回の高騰の概要
同社の株価は今回のように特別な材料によって高騰する時を除くと500円~800円あたりを推移していることが多いのですが、昨年11月くらいから防衛銘柄への物色の広がりと共に大きく底値を切り上げてきました。
2025年4月のトランプショックのタイミングで落ち込んだ後は1000円前後でやや低迷していましたが、直近で発表のあった2026年3月期Q1の決算が好業績だったことから1,200円ほどまで戻し、そこからもみ合いといった状況でした。
決算後の私の投稿↓
豊和工業が暴騰してました。 1Qの経常92%増はインパクトが大きいですね。 私が投資を始めた年に最初に買った個別株なので思い入れがあり、そのせいで2017年頃の高騰時にも利確せず後悔した苦い思い出もあります。当時は良い勉強になりました🥹 赤字の時でもひたすら20円配当をずっと続けてる会社ですが、これだけ利益が出てくるとさすがに増配を求める声も出てきそうです。 が、防衛省向け案件がずっと牽引してくれるわけではないと思うので、あまり期待せずにおきます。 ここまで来たらずっと保有し続ける所存です😅
— Shinobu (@economikko.blog) 2025年8月8日 16:17
そして今回の高騰の直接的な原因は新興ファンドの「fundnote」による大量保有が明らかになったことです。
2週間ほど前に呟いた6203豊和工業ですが、 どうやら新興ファンドの「fundnote」が買い集めていたようで、 本日、大量保有報告書が出ました。 たまに日中に瞬発力のある買い上げがあるなーと思っていたのですが、 そういうことだったんですね。 PTSではS高になってますが… 月曜日以降どうなるんですかね🤔
— Shinobu (@economikko.blog) 2025年8月22日 23:15
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そして迎えた本日、張り付きはしなかったものの強烈な買い気配から始まり、前日終値+275(+22.23%)で終えました。

前場に一時S高直前まで上がりましたが、その後1,500円を割り、下ヒゲを付けた後に上に収束しました。
小さな陰線ですが、下ヒゲのほうが長いほぼ十字線の形です。
fundnoteはどんな会社なのか
独立系のアクティブファンドで、2021年に創業後から多くの顧客を獲得し、すでに数百億円を運用しているそうです。
直販で投信を提供しており、現在は「fundnoteIPOクロスオーバーファンド」と「fundnote日本株Kaihouファンド」の2つのようです。
今回、豊和工業の大量保有が明らかになったのは後者です。
なお、この投信は純資産残高250億円程度とする同社の上限基準に達したため、現在は新規買い付けは出来ないとのこと。かなりの人気が伺えます。
著名投資家の井村俊哉氏が共同創設した株式会社Kaihouの投資助言を受けて投資先を選定しており、実質的には「井村ファンド」などと呼ばれることもあるようです。
買い材料としての評価
直近で同ファンドが大量保有報告を行った大末建設(1814)が参考になります。
同社に対する大量保有報告書は今年の7月8日受付で申告されていますが、翌日の株価はそれほど大きな反応を見せておらず、対比としては今回の豊和工業の反応は逆に過剰にも感じられます。
しかし一方で大末建設はその後も株価が右肩上がりとなっており、わずか1ヶ月半の間に20%ほど上げています。
もし大末建設への投資の成功例を引き合いにして材料視するのであれば、ひとまず同程度の値上がりがすでに達成されてしまったことになりますので、ここからさらに上がる直接的な材料にはならないのではないかと思います。
ただ、同社が注目しているということで優良投資先という認識が広まり、ここから短期~中期的には物色買いの対象となりえるかもしれません。
実際、アクティブファンドが投資するということはそれなりに将来性を見越しているわけですから、これまで注目されていなかった小型株の豊和工業にとっては大きな転換点になるかもしれません。
2017年の高騰時との比較
上でも引用しましたが、改めて私が豊和工業について述べた投稿を掲載します。
豊和工業が暴騰してました。 1Qの経常92%増はインパクトが大きいですね。 私が投資を始めた年に最初に買った個別株なので思い入れがあり、そのせいで2017年頃の高騰時にも利確せず後悔した苦い思い出もあります。当時は良い勉強になりました🥹 赤字の時でもひたすら20円配当をずっと続けてる会社ですが、これだけ利益が出てくるとさすがに増配を求める声も出てきそうです。 が、防衛省向け案件がずっと牽引してくれるわけではないと思うので、あまり期待せずにおきます。 ここまで来たらずっと保有し続ける所存です😅
— Shinobu (@economikko.blog) 2025年8月8日 16:17
冒頭で述べているように、私は長いこと豊和工業の株主で、2017年の高騰時も株主として値動きをハラハラと見守っていました。
2017年には北朝鮮によるミサイル発射が頻繁に行われ、アメリカに対する挑発なども相まって「本当に戦争になるのではないか」という不安から防衛銘柄への物色がありました。
しかし豊和工業はそれほど注目されておらず、石川製作所(6208)や細谷火工(4274)などが高騰しているのを横目に株価は相対的に上がっていませんでした。
それが一変したのは世界有数のファンドであるブラックロックによる大量保有報告が明らかになってからでした。
「あのブラックロックが注目しているのか」というただそれだけの理由で一気に注目が集まり、上述のように防衛銘柄としては出遅れていたことも相まって一気に値上がりが進みました。
記憶が正しければ2日くらいは連続でS高したかと思います。
その時に「3日連続でS高・S安になると値幅制限が拡大される」というルールを学んだのを覚えていますが、実際はそこまでは至りませんでした。(*今は2日連続にルールが変更されています。また、他にも条件があります)
さて、では今回の高騰と比較してみるとどうでしょうか。
ファンドの大量保有報告が契機となった点は共通していますが、発端となったファンドの規模や種類は異なります。
fundnote日本株Kaihouファンドは(少なくともPRによれば)国内上場企業への投資を純資産の9割以上の比率で行う国内集中型のファンドです。
今回の大量保有報告では「保有目的は、信託財産運用とされているが、重要提案行為を行うに変更する場合もある」と記載がありますが、これはよくある文言であり、必ずしも長期投資を行い投資先に対するアクティビスト的な動きをするとは限らないため、株価への影響が長期的に続くかは未知数です。
2017年当時と比べ今回は底値がかなり切り上がり、直近の好決算の影響もあって下地として良好な状態からの高騰となったため、条件はかなり違います。
また、S高とならなかったことも大きな違いで、動きのあった初日のザラ場中に大きく出来高が膨らみました。
以前よりも「防衛銘柄」として注目されている企業が増えている状況下で、その分資金が分散しやすくなっていることも環境要因としては大きいでしょう。
豊和工業の将来性は
長く株主として決算報告も読み続けてきましたが、正直それほど大きく期待できるのか?という疑問が残ります。
豊和工業は「防衛銘柄」として注目を浴びるものの、実際は小銃や迫撃砲などの比較的安価な装備品を製造しており、これらを作る火器部門は営業利益への貢献は安定して高いのですが、売上は全体の2~3割程度です。
工作機械は大きな売上比率の割に利益率が低く、規模の小さい特装車両(清掃車両など)や建材は赤字です。
現在は防衛予算の増額が叫ばれていますが、その増額分のお金が向かう先は無人機、戦闘機、ミサイルなどを筆頭に、艦艇や戦車などの「大きな」兵器です。
そのため、その恩恵は豊和工業には特に無いだろうと思っています。
ポジティブな点としては2020年に制式化された「20式5.56mm小銃」は自衛隊の小銃更新のため少しずつ量を増やしながら毎年数千~1万丁程度調達されており、これが今後10年くらいは安定的に利益を生み出してくれるのは間違いないでしょう。
また、構造改革を通して利益率改善に取り組んでいる点は実際に数字に現れており、評価できるポイントではあります。
今後の見通し
上述したように、私は長年の株主でありながらも豊和工業が高く評価されることはほとんど期待していませんでした。
現状の株価はすでに割高圏に入っていると思います。
しかし高い信託報酬を取りながらも大きな人気を持つファンドが、そのリサーチ力を持って調査した結果、投資先として選んだということは、私のような個人では考えもつかない理由があるのかもしれません。
そのためあまり自信を持って見通しは述べられませんが、まずは初日の動きが単なる一過性のものだったのか、今週の動きでだいたい分かると思います。
その上で今後も値上がり基調に入るのだとすれば、2017年に付けた高値が意識されるでしょう。
ただし当時はRSIも異常なほど高くなり、ほとんど調整もなく一気に2800円くらいまで駆け上がりましたので、もし調整をうまく挟みながらゆっくり上がっていくような流れになれば、元々の切り上がっていた底値を基点として順調に上がっていく可能性もありえます。
しかしそれ以前に、fundnoteが短期で売り抜けてしまうのであればすぐに元の株価に戻る可能性が常に残っています。
直近の値上がり基調が同ファンドによる買い集めの影響を含んでいることから、仮に売り抜けられた場合の下値目安としては1100円くらいまで落ち込むかもしれません。
とはいえ、直近で好決算を出したことは事実ですし、増配などのポジティブ材料が出てくれば上述のような上昇トレンドに拍車がかかることも期待できます。
また、もともと昨年より続いていた防衛銘柄全般への注目が今もまだ続いていることから、豊和工業にも多少なりとも目が向くきっかけにはなるかもしれません。
しかしアメリカのトランプ大統領による思惑からロシア・ウクライナ戦争は強引な形で終結する可能性もあり、台湾・中国の問題も今は落ち着いた状態なので、防衛銘柄のトレンドはひとまず萎み始めるというシナリオも常に考えておいた方が良いでしょう。
コメント
コメント一覧 (1件)
典型的なイナゴタワーだからすぐ元に戻りそうだな