個人資産800億円超で「最後の長者番付」1位となった伝説の投資家、清原達郎氏の著書「わが投資術 市場は誰に微笑むか」を読了しました。
この記事では書籍の要点と感想を書いていきたいと思います。
目次と概要
判断が間違っていた=損をするとは限らない。
逆に正しかった=儲かるとも限らない。
株価に織り込まれていない、気付いている人がいない(少ない)情報に気付けるかどうかが鍵。
情報収集のためにお金をかけるのは無駄(でも四季報は勧めている)。
野村證券入社から転職、自身のヘッジファンド設立に至るまでの清原の半生を回顧。
ヘッジファンドとはそもそも何か、運用方法の種類や違い。
そもそも何をもって「割安」と言えるのかの(清原氏の考える)基準。
投資金額の少ない個人投資家こそメリットのある小型成長株を買って値上がり後に売却して利益を得る方法。
なぜ小型株が割安のまま放置されうるのか。
小型株の成長性の根源は9割は経営者次第。
清原氏の「K1ファンド」がどのような運用をしてきたのか、25年間のうちそれぞれのステージで具体例を挙げて解説。(一部は6章で詳説)
出てきた当初は信用を得られなかったREITをどのように運用して利益を上げたか。どのような思惑や予想に基づき投資したのか。
清原氏がロング運用してきた銘柄を紹介。
利益を上げたものだけではなく、失敗して損失を被ったものも解説。
清原氏がショート運用してきた銘柄を紹介。
ただし個人投資家にはショート運用はおすすめしない。
ショートの分散投資は愚か。
ロングとショートを組み合わせるペアートレードについて解説。
(特に個人投資家が)手を出すべきではない投資テーマや投資対象。
金融商品の手数料について。
予想されるリスクや市場としての特徴。
各章の感想
- 1章: これから投資を始めようと考えている個人を後押しする内容になっています。
「情報」の大切さを強調しており、なるほどと思わされます。
- 2章: 金融業界の裏話などが書かれており、興味深いです。
顧客を食い物にする(当時の)証券業者の悪徳さにはドン引きです。
- 3章: 小型株に投資することのメリットが強調されており、腑に落ちる部分も多いのですが、これに影響されてリサーチ不足の小型株を「思い切って」買わないように注意が必要だと感じました。
- 4章: ファンドによる運用の実例が挙げられており興味深かったです。
ただし個人では入り込めない世界で、直接的に投資に役立つものとは少し違いますね。
- 5章: 章自体が短いのですが、REITの成り立ちから解説されており、知らなかった人にとっては学びのある内容かもしれません。
- 6章 & 7章: 実際の運用例が詳細に書かれており面白いです。
規模が大きいですが、一部は個人投資家でも応用できる戦略や思考が書かれています。
- 8章: 清原氏の個人的な意見に基づく「やってはいけない投資」。
同意できる部分が多いのですが、よほど嫌悪感があるのか主張が激しいですね。
- 9章: 清原氏による、これからの日本株市場に関する個人的予想。
確かにそうだろうな、と思える部分が多いですが、著書のレビュー等で「ポジショントーク」と批判されていることもあるようです。
総評
個人投資家としては日本で1,2を争うほど有名で実績を持つ清原氏の著書ということで、人気があるのも頷ける興味深い内容でした。
ただし、これを読んだからといって投資がすぐに上手くいくとか、投資の真髄が理解できるとか、そういう魔法のような効果はありません。(当たり前ですが)
あくまでも一人の投資家の「自分はこうやった」という成功談・失敗談が赤裸々に語られており、それを参考にしてどう活かすかは、やはり読者自身にかかっているわけですね。
この本を読んでみて感じた点を簡単にまとめると、次のような感じです。
良かった点
- 成功談だけではなく失敗談も書いている
- 初心者にも分かるような解説も交えている
- 全体的に平易な内容で口語調で語られており読みやすい
気になった点
- 政治・思想に関する個人的な意見の主張は本書の内容に対しやや場違いな印象
- 口語調(「~ですねえ。」「~でしょうねえ。」など)は人によっては逆に読みにくいと感じるかも
「お客が損をして証券会社が儲かる」
という実情に違和感を抱き、
「顧客が儲かって自分も儲かる」
というWIN-WINの関係を築けるファンドを作ることを目指した清原氏。
実際に預かった資産を何十倍にも増やして顧客から感謝され、自身も億万長者となったサクセスストーリーは素直に尊敬に値します。
投資の参考になるかは別として、読み物としても面白いと思いました。
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